【弁護士解説】動物病院におけるオンライン診療の初診対応は可能か?

2024年12月27日、農林水産省より「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針(以下「本指針」)」が公表され、愛玩動物(ペット)に対するオンライン診療の制度的枠組みが明確に示されました。
▶︎ 愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針(農林水産省)

さらに、指針の運用に関する具体的なQ&Aも公表されており、獣医療におけるオンライン診療の実務に与える影響は非常に大きいものといえます。
▶︎ 愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針 Q&A (農林水産省)

本記事では、「初診からのオンライン診療は可能か?」という点を中心に、本指針とQ&Aをもとに法的整理を行います。

目次

原則:オンライン診療はかかりつけ医による実施が前提

本指針では、オンライン診療はあくまで「かかりつけ医」が行うことを基本としています(指針2(1))。かかりつけ医とは、当該動物とその飼い主の診療歴を有し、対面診療を通じて信頼関係を構築している獣医師を指します。

このため、初診からいきなりオンライン診療を行うことは、原則として想定されていません。

なお、初診とは診療施設において、初めて診察を⾏うことをいいますが、継続的に診療している場合においても、新たな症状等(ただし、既に診断されている疾患から予測された症状等を除く。)に対する診察を⾏う場合や、疾患が治癒した後⼜は治療が⻑期間中断した後に再度同⼀疾患について診察する場合も、「初診」に含むものとされています(Q&Aの【Q4】)。

例外:かかりつけ医でない獣医師が初診からオンライン診療を行える場合

しかしながら、特定の条件下においては、かかりつけ医でない獣医師が初診からオンライン診療を行うことも可能とされています。これについては、Q&Aの【Q6】で以下のように明記されています。

「『かかりつけの獣医師』以外の獣医師が診療前相談等を⾏った上で初診からのオンライン診療を⾏うのは、休⽇夜間等で『かかりつけの獣医師』がオンライン診療に対応できない場合や『かかりつけの獣医師』がオンライン診療を⾏っていない場合が想定されます。その場合、診療前相談をするなどして、当該愛玩動物の 既往歴や予防情報、健康診断結果等の必要な獣医療情報を把握することが必要です。」

愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針 Q&A (Q6)

このように、

  • かかりつけ医が休診等で診療を受けられない場合
  • かかりつけ医がオンライン診療を行っていない場合

には、他の獣医師がオンライン診療を行うことも想定されています。もっとも、この場合でも、「診療前相談」を通じて、適切な情報収集とリスク判断を行うことが前提となっており、自由な遠隔診療を無制限に認めているわけではありません。

要指示医薬品の処方は不可 初診オンライン診療の制限

初診からのオンライン診療において、特に注意が必要なのが「要指示医薬品」の処方です。

これについて、Q&A【Q10】には、初診での要指示医薬品の処方はできない旨記載されています。

では、初診再診共にオンライン診療を行い、再診時に要指示医薬品の処方を行うことができるのかという問題がありますが、これについては、Q&A【Q10】において、以下の記載があります。

「要指⽰医薬品の多くは、対象動物の使⽤制限等の観点で、体重、基本的な健康状態、専⾨的な検査の結果等から処⽅の可否を判断するため、対⾯による診療を経て処⽅される必要があります。」

愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針 Q&A (Q10)

したがって、要指示医薬品の処方を行うためには、オンライン診療のみではなく少なくとも一度は対面診療を受けていることが条件となります。

まとめ

初診からのオンライン診療は限定的に認められるが慎重な運用が必要

  • オンライン診療は原則「かかりつけ医」によるものが想定されている
  • 例外的に、かかりつけ医が休診・非対応の場合に限り、他の獣医師による初診オンライン診療も可能
  • 要指示医薬品の処方は、初診からのオンライン診療では不可であり、対面診療が必要

動物病院においてオンライン診療を導入する場合には、本指針およびQ&Aの趣旨を十分に理解し、法令に適合した運用を行うことが不可欠です。特に、初診の取扱い、診療記録の保存、薬剤の処方管理には十分な注意が求められます。

弊所では、動物病院の運営に関する法務サポートや、オンライン診療導入時の指針対応、規程整備などを支援しております。オンライン診療の導入・運用に際して不安を感じている獣医師の方、運営法人の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)

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