獣医療に関しては、獣医療広告ガイドラインにおいて、費用に関する広告が禁止されています。
もっとも、以下のとおり一定の場合には、費用に関する広告も可能です。
獣医療広告ガイドライン
獣医療に関する広告については、獣医療法(以下「法」といいます。)17条1項に基づき一定の規制がされています。
(広告の制限)
第十七条 何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。第二号を除き、以下この条において同じ。)又は診療施設の業務に関しては、次に掲げる事項を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。
一 獣医師又は診療施設の専門科名
二 獣医師の学位又は称号
2 前項の規定にかかわらず、獣医師又は診療施設の業務に関する技能、療法又は経歴に関する事項のうち、広告しても差し支えないものとして農林水産省令で定めるものは、広告することができる。この場合において、農林水産省令で定めるところにより、その広告の方法その他の事項について必要な制限をすることができる。
3 農林水産大臣は、前項の農林水産省令を制定し、又は改廃しようとするときは、獣医事審議会の意見を聴かなければならない。
獣医療法
法17条2項後段において、
「農林水産省令で定めるところにより、その広告の方法その他の事項について必要な制限をすることができる。」
と定められており、
かかる農林水産省令として、
獣医療法施行規則(以下「規則」といいます。)第24条において、
(広告制限の特例)
第二十四条 法第十七条第二項前段の農林水産省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 (略)
四 犬又は猫の生殖を不能にする手術を行うこと。
五 狂犬病その他の動物の疾病の予防注射を行うこと。
六 医薬品であって、動物のために使用されることが目的とされているものによる犬糸状虫症の予防措置を行うこと。
七 飼育動物の健康診断を行うこと。
八 (略)
2 法第十七条第二項後段の農林水産省令で定める制限は、次のとおりとする。
一 (略)
二 (略)
三 前項第四号から第七号までに掲げる事項を広告する場合にあっては、提供される獣医療に要する費用を併記してはならないこと。
獣医療法施行規則
以上からすると、技能、療法又は経歴に関する獣医療広告について、
施行規則24条1項4号ないし7号、すなわち
- 犬又は猫の生殖を不能にする手術を行うこと。
- 狂犬病その他の動物の疾病の予防注射を行うこと。
- 医薬品であって、動物のために使用されることが目的とされているものによる犬糸状虫症の予防措置を行うこと。
- 飼育動物の健康診断を行うこと。
については費用に関する広告ができないものといえます。
費用に関する広告とは
「提供される獣医療に要する費用」(規則24条2項3号)とは、診療等の対価として必要な金銭のことをいい、広告規制の趣旨は、技能又は療法と併せて費用を広告することで、低価格競争による獣医療の質の低下を招き、社会の混乱を招くおそれが懸念されるところにあります。
そのため、「より安価な」「低価格で」「料金は相談に応じて」等の抽象的な表現であっても、費用に関する広告として禁止されます。
一方で、「費用に関しては、電話で確認してください」等の表現は、直ちに低価格を推測させるものではないため、費用の広告とはみなされません。
広告該当性
では、そもそもどのような表現が、獣医療法17条2項の「広告」に該当するのか。
これについては、獣医療広告ガイドラインに記載があります。
獣医療広告ガイドラインによれば、
広告とは、随時に又は継続してある事項を広く知らしめるものであり、
- 誘引性(飼育者等を誘引する意図があること)
- 特定性(獣医師の氏名又は診療施設の名称が特定可能であること)
- 認知性(一般人が認知できる状態にあること=あえて求めなくとも患者や一般人の目に入ってくるもの))
の3要件を満たしたものとされています。
したがって、バナー広告やリスティング広告等は、上記全ての要件を満たしており、「広告」に該当する一方、
動物病院のホームページは、飼育者等が自ら「犬 健康診断」等とネット検索をし、その候補の中から特定の動物病院のサイトをクリックして開いている以上、③の認知性の要件を満たさないものといえ、「広告」に該当しないものといえます。
したがって、動物病院のホームページ内に料金表を載せることも現状の獣医療法の解釈の下では問題ございません。
なお余談ですが、獣医療ではなく人間に関する医療広告については、医療法の改正により、③認知性の要件は不要とされたため、ウェブサイトやメルマガ、パンフレット等についても「広告」に該当するものと解されています。
その他法規制
上記のとおり、獣医療法上は動物病院のホームページに料金体系を載せることも問題ございませんが、
ホームページにおける表記については獣医療法のみならず、薬機法や景表法等その他の法律により規制を受ける可能性があります。
まとめ
ネクスパート法律事務所では、ペットや企業法務等獣医療法のみならず薬機法や景表法に詳しい専門チームがあり、上記のようなお悩みに対応することが可能です。
広告を掲示するに際し、不安がある事業者様は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。
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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)