獣医療法施行規則の改正について

令和5年10月13日付けで「獣医療法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年農林水産省令第52号)が公布され、令和6年4月1日からこれが施行されることになりました。
これに基づく獣医療広告の改正点を以下概説致します。

目次

改正のポイント

獣医療広告については、獣医師又は診療施設の業務に関して、特定の例外を除き技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない旨定められています。

かかる例外として、従前は、

  • 獣医師又は診療施設の専門科名(獣医療法17条1項1号)
  • 獣医師の学位又は称号(同条同項2号)
  • 獣医師が免許を有していること、診療施設を開設していること(規則24条1号)
  • 医療機器を有していること(同条2号)
  • 去勢・避妊手術を行うこと(同条4号)
  • フィラリアの予防措置を行うこと(同条5号)
  • 健康診断を行うこと(同条7号)

等のみが技能、療法又は経歴に関する事項として広告できる旨定めていました。

もっとも、今回の改正により、改正規則24条1項各号に以下の広告可能事項が追加されました。

農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていること(2 号)

専門性の質を高め、良質な獣医療が提供されることを目的として農林水産大臣が指定した団体が運用する認定プロセスを経ていることを広告し、その専門性の資格を有する旨を知らしめることを可能とするものです。

高度な検査、手術その他の治療を行うこと(3号)

承認された医薬品等を使用した一般的な診療行為よりも高度な技能又は療法を想定したもので、具体的には椎間板ヘルニアによる片側椎弓切除術、白内障の眼科手術、細胞を用いた再生医療等が想定されます。

寄生虫病の予防措置を行うこと(8号)

上記のとおり、従前はフィラリアの予防措置のみが広告可能事項とされていましたが、ノミ、ダニ等のその他寄生虫に関する予防措置を行っていることも広告可能となりました。

マイクロチップの装着を行うこと(10号)

動愛法が改正されブリーダーやペットショップ等で販売される犬又は猫については、マイクロチップの装着が義務化され(動愛法39 条の2第1項)、それ以外の所有者についてもマイクロチップの装着が努力義務とされました(同条2項)。

これに伴い、マイクロチップの装着を行うことを広告できるようになりました。
もっとも、かかる広告を出す際は、動愛法39条の5第1項に規定する犬又は猫の登録に関する説明を併記しなければなりません(改正規則24条2項3号)。

獣医師の役職及び略歴に関すること(11号)

勤務した診療施設や、卒業大学、大学教授であること等が広告可能となりました。なお、略歴としてテレビに出演したことを表記することや、研修履歴については、広告ができないものと解されています。

愛玩動物看護士の勤務する診療施設であること(16号)

当該診療施設に愛玩動物看護師法(令和元年度法律第 50 号)第2条第2項に規定する愛玩動物看護師が勤務していることについて広告可能としたものである。

ただし、診療の補助として特定の診療行為を行っている旨を広告することはできないものとされています。

したがって、「愛玩動物看護士が採決を実施しています。」等は表記できず、あくまで、「当院には愛玩動物看護士が在籍しています。」等の表記等にとどめる必要があります。

追加された規制

今回の改正に伴い、技能・療法に関する事項を広告する場合にあっては、「問合せ先」、「通常必要とされる診療内容」、「診療に係る主なリスクや副作用」、及び「費用」について併記しなければならないこととされました(改正規則24条2項1号ハ)。

そこで、例えば避妊手術を行う場合には、以下の記載が必要となります。

必要な記載詳細
問合せ先●●動物病院 住所、電話番号、ホームページのURLの記載
通常必要とされる診療内容血液検査→手術→入院→抜糸等の診療内容及び、「治療期間7日~10日(抜糸含む。)」「治療回数2回(抜糸含む。)」等通常必要とされる治療期間及び回数の記載
診療に係る主なリスクや副作用麻酔リスク、感染症リスク、術後の肥満リスク等の記載
費用総額●●~●●円等の記載

まとめ

上記のとおり、獣医療法施行規則が改正されたことで、広告可能事項が拡大したことに加え、新たな規制も加わりました。

獣医療等に関する広告を出す際には、上記事項を遵守するよう注意する必要があります。

また、ネクスパート法律事務所では、ペット法務の専門チームがあり、獣医療広告に関するお悩みに対応することが可能です。

広告を出す際に不安に思われた事業者様は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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弁護士 尾又 比呂人(第一東京弁護士会所属)

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