【弁護士解説】ペットホテルの契約書について

ペットホテルで、預かっているペットが死亡や怪我をしてしまった場合、どのような法的責任が生じるか、免責条項を設けた契約書を締結している場合は、かかる法的責任を負うか、本記事では、ペットホテル業の法的責任について、法的な観点から解説します。

目次

預かり中のペットが死傷してしまった場合

有償でペットを預かる、いわゆるペットホテル業については、事業者と契約者との間で寄託契約が成立します(民法第657条以下)。

有償での寄託契約の場合は、職業や社会的地位等に応じ、一般的に要求される注意義務をもって、ペットを保管すべきとする善管注意義務が課されます(民法第659条反対解釈、民法第400条)。

ペットの保管業は、一般的に深夜は無人にし、リアルタイムでペットを管理することができる体制を整えていない事業者が多いかと思います。

これについて、善管注意義務の内容として、ペットホテル事業者には、深夜帯であっても、預かったペットが抜け出せないようなケージにする、ペットに危害が生じないような環境を整える義務はあるものといえるでしょう。

また、寄託契約を締結する段階で、預かるペットの特殊な状態等をヒアリングしている場合には、それに応じた管理体制の構築を行うべきと考えられます。

免責特約の効力

ペットを預かる際に、契約書に基づき寄託契約を締結されているペットサロン事業者も多いかと思います。

その際に、契約書内に「ペットの死亡や怪我等の事由により損害が生じた場合でも、当社は一切の責任を負いません。」という内容の免責条項を設けていた場合、免責されるのでしょうか?

これについては、消費者契約法第8条第1項において、事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除するような条項を設けた場合、かかる条項は無効とされる旨規定されております。

また、「ペットの死亡や怪我等の事由により損害が生じた場合でも、10万円分の損害を限度としてその責任を負います。」等の、責任を一部免除する条項についても、消費者契約法の同条同項において、事業者に故意又は重過失がある場合には、消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項は無効と規定されているため、無効と解されることになります。

このようにペット寄託契約書に関しては、消費者契約法等により無効と解される場合があるため、専門的な知見を持った弁護士によりこれを作成し、万が一に備えておく必要があります。

損害額

ペットを預かっている最中に、預かっていたペットが怪我等を負ってしまった場合、どの範囲で賠償する義務を負うでしょうか?

これについては、基本的に加害行為と相当因果関係が認められる範囲内の損害を負う必要があると解されています。

具体的には、ペットの治療費、入院費、通院費等がこれに含まれるものと考えられます。

また、ットは法的に「物」とみなされるため、当該「物」の時価額以上の損害が発生した場合には、当該時価額を超えた損害を賠償する義務は生じないのではないかという問題があります。

これについては、治療費等の上限を犬の時価額とするのではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上相当と認められる限度でこれを認容するとした判例があります。(名古屋高判平20・9・30交民41巻5号1186頁)

したがって、かかる考え方によれば、治療費等の上限は犬の時価額には限定されない可能性があり、高額に及ぶ可能性があります。

また、ペットが死亡等したことで、数十万円の慰謝料を認める判例もあり、上記治療費等と合わせて相当な賠償金を支払う必要が生じることがあります。

まとめ

以上のように、ペットホテル事業者においては多額の損害賠償責任を負う可能性があるため、専門的な知識を持った弁護士により契約書を作成しておく必要があります。

ネクスパート法律事務所では、企業法務分野、ペット法務分野に関する専門的なチームがあり、これに対応することができます。

また、日頃分からないことがあれば、チャットワーク等でご相談いただき、弁護士からすぐに返答させていただくサービスも提供しております。

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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)

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