【弁護士解説】ペットフード・ペット用品の広告規制について

リスティング広告や、SNS広告で、クリニックの宣伝を行おうと考えているペットフード・ペットショップ事業者の方も多いのではないでしょうか。

もっとも、ペットフード・ペット用品の広告に関しては、法的規制がかかることがあります。

そこで、ペットフード・ペット用品の広告規制に関して、以下順を追って解説致します。

目次

薬機法による規制について

ペットフード・ペット用品について、

医薬品すなわち

(ⅰ)疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているもの

(ⅱ)身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの

又は、

医薬部外品すなわち、

(ⅲ)吐き気その他の不快感、口臭・体臭、あせも、ただれ等の防止、脱毛防止、育毛・除毛、はえ・蚊・のみ等の防除の目的で使用されている作用が緩慢なもの

に関する表記ができるのは、その効能・効果が承認された医薬品、医薬部外品(以下「医薬品等」といいます。)のみとなります。

したがって、(ⅰ)~(ⅲ)に関する表記をした場合、すなわち、

(a)病名・症状、疾病の原因又は好ましくない意味の語句で修飾されている身体の構造・機能の表記

(b)身体の構造・機能に影響を及ぼす旨の表記

は原則として医薬品的表記とみなされます。

医薬品的表記とみなされないためには

上記のとおり、(a)病名・症状、疾病の原因、好ましくない意味の語句で修飾されている身体の構造・機能の表記、(b)身体の構造・機能に影響を及ぼす旨の表記をした場合、原則として、これは医薬品的表記とみなされます。

もっとも、上記場合に当たる表記であっても、以下のとおり例外的に医薬品的表記とみなされない表記方法があります。

病名・症状

療法食であって、総合栄養食の主な栄養成分を調整し、病名又は症状に対応した療法食であることが説明されている場合のみ、「病名・症状」を表記できます。

なお、「病名又は症状」に対して使用できる表記は「対応、管理、配慮(ケア)」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

NG
  • 「腎臓病に対応した商品です。」
OK
  • 「腎臓病に対応し、〇〇の含有量を減少させた療法食です。」

尿石

総合栄養食の主な栄養成分を調整し、又はそれによりpHを調整しているとの説明がされている場合のみ、「尿石」を表記できます。

なお、「尿石」に対して使用できる表記は「対応、管理、配慮(ケア)、形成しにくくする」の同義語のみで、改善を意味する表記はできません。

NG
  • 「尿石の形成を抑えます。」
OK
  • 「マグネシウムの含有量を調整し、尿石の形成を抑えます。」

免疫(力)、抵抗力

「健康維持による」や、バランスのとれた栄養成分によりペットの健康が維持されるとの妥当な説明がされている場合のみ「免疫(力)、抵抗力」を表記できます。

なお、「免疫(力)、抵抗力」に対して使用できる表記は「保つ、維持」の同義語のみで、改善・増強を意味する表記はできません。

NG
  • 「〇〇配合により、免疫力を保ちます。」
OK
  • 「〇〇配合により健康を維持し、免疫力を保ちます。」

食物アレルギー

アレルゲンを含まない又はアレルゲンとなりにくい処理を施したとの説明がされている場合のみ、「食物アレルギー」と表記できます。

なお、「食物アレルギー」に対して使用できる表記は「対応、管理、配慮(ケア)」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

NG
  • 「牛肉アレルギーに対応しています。」
OK
  • 「牛肉アレルギーの犬に対応して、生肉を使用していません。」

歯垢、歯石、口臭

口腔内で消化されやすい又は噛むことによるとの説明がされている場合(口臭については、着香等によるとの説明も可能)に限り、「歯垢、歯石、口臭」を表記できます。

なお、「歯垢、歯石、口臭」に対して、「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記ができます。

NG
  • 「歯垢の沈着を抑え歯の健康を維持します。」
OK
  • 「噛むことにより歯垢の沈着を抑え歯の健康を維持します。」

ストレス

噛むことや遊ぶことによるとの説明がされている場合に限り、「ストレス」を表記できます。

なお、「ストレス」に対して、「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記ができます。

NG
  • 「愛犬のストレス解消のために。」
OK
  • 「噛みながら楽しく遊べて愛犬のストレスを解消します。」

糞尿臭

着香や臭いの吸着による餌や腸内容物への物理的作用によるとの説明がされている場合のみ、「糞尿臭」を表記できます。

なお、糞尿臭に対して「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記ができます。

NG
  • 「〇〇成分を配合することで、尿臭を抑える」
OK
  • 「〇〇成分が腸管内の臭いを吸着し、尿臭を抑える」

毛玉

食物繊維による物理的作用について説明がされている場合のみ、「毛玉」の表記ができます。

NG
  • 「愛猫の毛玉の排出をサポートします。」
OK
  • 「食物繊維を適切に配合することで、愛猫の体内にある毛玉の排出をサポートします。」

食欲のない状態

風味又は製品自体の嗜好性に関する物理的特徴について説明がされている場合のみ、食欲のない状態に関する表記ができます。

なお、食欲のない状態に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮(ケア)、気になる」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

NG
  • 「食欲が落ちてきた愛犬に対応した製品です。」
OK
  • 「〇〇風味で、食欲が落ちてきた愛犬に対応した製品です。」

咀嚼能力が弱い状態

形状又は硬さに関する物理的特徴について説明がされている場合に限り、咀嚼能力が弱い状態に関することを表記できます。

なお、咀嚼能力が弱い状態に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

NG
  • 「あごの力が衰えた老犬に。」
OK
  • 「本製品は、あごの力が衰えた老犬に配慮し、柔らかい〇〇を使用しています。」

消化能力が弱い状態、便質

優れた消化性に関する物理的特徴について説明がされている場合に限り、消化能力が弱い状態、便質に関することを表記できます。

なお、消化能力が弱い状態に対して使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

一方便質に対しては、「軽減、抑える、解消」等の一定の改善・予防の表記が使用できます。

この違いは、「消化能力」が身体の機能そのものであるのに対して、「便質」は排泄物の状態を示すものであるためです。

これらの内容からして、「腸内環境」は、身体の構造である消化管壁も含むと解されるため、健康の維持の範囲内での表記出なければなりませんが、「腸内細菌」については、身体の構造ではないため、その表記は、内容にかかわらず、医薬品的な表記とはなりません。

NG
  • 「消化吸収をサポートします。」
OK
  • 「消化性に優れた〇〇を使用することで、弱りがちな消化吸収をサポートします。」

体重管理(体型、肥満等)

カロリー、脂肪又は食物繊維について説明がされている場合に限り、体重管理に関することを表記できます。

なお、体重管理に関し使用できる表記は、「対応、管理、配慮、気になる」の同義語のみで、改善・予防を意味する表記はできません。

もっとも、低カロリー、低脂肪等体重減少につながる物理的特徴が明記されている場合は、「減少」等の一定の改善の表記ができます。

NG
  • 「本商品は愛猫の肥満に配慮しています。」
OK
  • 「本商品は愛猫の肥満に配慮し、低カロリーに仕上げています。」

まとめ

以上のとおり、広告を出す際には、医薬品的表記とみなされないために一定の表記をする必要があり、また、上記例外の他にも、記載次第で医薬品的表記とみなされない場合があります。

一方で、上記例外に当たる記載をしたとしても、商品の説明文や写真等の記載次第では医薬品的表記とみなされる可能性があります。

また、ペットフード等の広告に関しては、上記のとおり、ペットフード安全法や景表法等の規制にかからないかチェックする必要があります。

終わりに

広告を掲載する際には、弁護士によるリーガルチェックをおすすめしております。

ネクスパート法律事務所ではこのような広告法務について専門チームで対応させていただいています。

また、日頃分からないことがあれば、チャットワーク等で相談いただき、弁護士からすぐに返答させていただくサービスも提供しております。

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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)

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