【弁護士解説】飼い犬が噛み付きトラブルに遭ってしまった…

ペットが他人の飼い犬に噛み付かれて怪我を負ってしまった、そんな場合に法的にどのような請求ができるでしょうか?

目次

ペットの治療費等は請求できる?

動物の飼い主は、当該動物の占有者として、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います(民法第718条1項本文)。

ペットが他人の飼い犬に噛み付かれ、怪我を負ってしまった場合には、原則として当該加害行為と相当因果関係が認められる範囲の損害につき、賠償請求することが可能です。

具体的には、治療費、入院費、通院費等がこれに含まれます。

ペットのトラブルでよく問題となることとして、ペットは法的に「物」とみなされるため、当該「物」の時価額以上の損害が発生した場合には、当該時価額を超えた損害を賠償請求できるのかという問題があります。

これについては、治療費等の上限をペットの時価額とするのではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上相当と認められる限度でこれを認容するとした判例があります(名古屋高判平20・9・30交民41巻5号1186頁)。

このような判例の考え方からすれば、時価額とかけ離れた治療費の請求は難しいものの、時価額以上の請求も可能と考えられます。

ペットの慰謝料は請求できる?

ペットが噛み付かれ、怪我を負ってしまった際に慰謝料の請求ができるのかという法的問題があります。

この点、確かに、法律上ペットは「物」として扱われていますが、「物」の破損により慰謝料の支払義務が生じる可能性もあります

通常、慰謝料は精神的損害の補填という意味合いが強いものであり、「物」が毀損した場合には、財産的価値が補填されることで精神的損害も補填されたものとみなされます。

しかし、ペットは飼い主にとって家族の一員であり、時価額賠償だけでは精神的損害が完全に補填されたとはいえないことがあります。

実際に数十万円の慰謝料を認める判例もありますが、人が噛み付かれた場合と比較すると少額な慰謝料額にとどまることが多いです。

飼い主が相当な注意をしていた場合、責任を負わないこともある

民法第718条第1項ただし書において、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、損害賠償責任を負わないとされています。

相当の注意とは、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処し得べき程度の注意義務まで課したものではないものと解されていますが(最判昭37・2・1民集16巻2号143頁)、これにより飼い主の損害賠償責任を免責した裁判例は少なく、無過失責任に近いものと考えられます。

終わりに

上記のとおりペットは法律上「物」とみなされており、これまでの判例上、慰謝料額は人の事故と比較するとかなり少額にとどまります。

ペットも家族であり、ペットが死傷してしまった場合の飼い主の精神的苦悩は計り知れないものかと思います。

そのような状況を変えるためにも、一般社団法人アニマルパーソンズは、ペットを「物」と扱うという法律や判例を変えるために活動をしております(https://animal-persons.or.jp/)。

ぜひ、ネクスパート法律事務所、一般社団法人アニマルパーソンズにご賛同、ご相談ください。

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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)

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